高齢の愛猫がご飯を食べない状況は飼い主にとって心配な問題です。
しかし、おやつは食べる様子を見ると、単なるわがままなのか、それとも病気のサインなのか判断に迷うかもしれません。
老猫がおやつしか食べない背景には、加齢による身体の変化や隠れた病気など、様々な原因が考えられます。
この記事では、老猫がご飯を食べなくなる原因を探り、食事の工夫や動物病院を受診するタイミングの目安について解説します。
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なぜ?老猫がご飯を食べずにおやつだけ食べる5つの原因
老猫が普段の食事を拒否し、おやつしか食べない行動には、いくつかの理由が考えられます。
その背景には、単なる嗜好の変化だけでなく、病気や加齢に伴う身体機能の低下が隠れている可能性があります。
愛猫の様子を注意深く観察し、なぜご飯を食べないのか原因を探ることが、適切な対応への第一歩となります。
ここでは、考えられる5つの主な原因について解説します。

1. 腎臓病や口内炎など病気が隠れている
老猫がご飯を食べない原因として、病気が潜んでいる可能性は常に考慮すべきです。
特に高齢のネコちゃんに多い慢性腎臓病は、進行すると尿毒症により吐き気や食欲不振を引き起こします。
また、口内炎や歯周病など口の中の痛みも、食事を避ける直接的な原因となります。
硬いドライフードは食べられなくても、味が濃く柔らかいおやつなら食べられることがあるため、おやつを食べるからと安心はできません。
ほかにも、便秘や消化器系の不調など、様々な病気が食欲低下の原因となりうるため、普段と違う様子が見られたら注意が必要です。
2. 加齢により噛む力や飲み込む力が弱くなった
人間と同じように、ネコちゃんも年を重ねると筋力が衰え、食べ物を噛む力(咀嚼力)や飲み込む力(嚥下力)が低下します。
特に歯が弱くなったり、歯周病を患っていたりすると、硬いドライフードを噛み砕くのが困難になります。
そのため、これまで好んで食べていたご飯を食べないようになることがあります。
一方で、ペースト状のおやつや、柔らかく加工されたおやつは、あまり噛む必要がなく飲み込みやすいため、好んで食べる傾向があります。
もし硬いものを避けるような素振りが見られたら、食事の硬さや形状を見直す必要があるかもしれません。
3. 嗅覚の衰えでフードの匂いが分かりにくくなった
ネコちゃんは食べ物を匂いで判断し、食欲を刺激される動物です。
しかし、加齢に伴い嗅覚が衰えると、これまで食べていたフードの匂いを感じにくくなり、食事への興味を失ってしまうことがあります。
特に、香りが比較的弱いドライフードの場合、ご飯を食べないという状況に陥りやすいです。
その反面、おやつはネコちゃんの嗜好性を高めるために香りが強くつけられている製品が多いため、嗅覚が衰えた老猫でも匂いを感知しやすく、食欲が刺激されて食べることがあります。
フードの匂いが食欲に大きく影響することを理解しておくことが大切です。
4. 認知機能が低下し食事への関心が薄れた
高齢のネコちゃんでは、認知機能の低下が見られることがあります。
認知機能が低下すると、自分が食事をすべき時間であることや、フードが置かれている場所を認識できなくなる場合があります。
その結果、ご飯がそこにあるにもかかわらず、食べ物として認識できずに無関心を示し、食欲不振につながることがあります。
飼い主が声をかけたり、フードを口元まで運んで匂いを嗅がせたりすることで、食事を思い出し食べ始めるケースも見られます。
夜鳴きや徘徊など、食欲不振以外の行動変化が見られる場合は、認知機能低下の可能性も視野に入れる必要があります。
5. わがままや偏食で美味しいものだけを求める
病気や身体的な衰えがなく、元気な様子であるにもかかわらず特定のご飯を食べない場合は、わがままや偏食の可能性があります。
おやつのおいしさを覚えてしまうと、より嗜好性の高い食べ物を要求するようになり、普段のフードを食べなくなることがあります。
「ご飯を食べなければ、もっと美味しいおやつがもらえる」と学習してしまい、おやつしか食べないという状況に陥るのです。
この場合、ネコちゃんの健康状態に問題がないかを確認した上で、おやつの与え方やタイミングを見直す必要があります。
単なるわがままと決めつける前に、他の原因がないかを慎重に判断することが求められます。
食欲がない老猫にご飯を食べてもらう6つの工夫
老猫がご飯を食べない原因がわがままや加齢によるものであれば、食事に少し工夫を加えることで食欲を取り戻してくれる可能性があります。
猫の五感を刺激し、「食べたい」という気持ちを引き出してあげることが重要です。
ここでは、今日からでも試せる具体的な6つの工夫を紹介します。
愛猫の好みや体調に合わせて、いくつかの方法を組み合わせて試してみてください。

1. ドライからウェットへ食事の形態を変えてみる
硬いドライフードをご飯を食べない老猫には、食事の形態をウェットフードに変えてみるのが効果的です。
ウェットフードは水分を多く含んでいるため柔らかく、噛む力や飲み込む力が弱くなったネコちゃんでも食べやすいという利点があります。
また、ドライフードに比べて香りが強い製品が多く、嗅覚が衰えたネコちゃんの食欲を刺激しやすいです。
さらに、食事から自然に水分を補給できるため、脱水予防にもつながります。
まずは普段のドライフードに少量を混ぜることから始め、ネコちゃんの反応を見ながら徐々に切り替えていくと良いでしょう。
2. フードを人肌程度に温めて香りを強くする
ネコちゃんの食欲は匂いに大きく左右されるため、フードを少し温めて香りを立たせることは非常に有効な方法です。
特にウェットフードは、電子レンジで数秒間、人肌程度に温めると香りが強くなり、嗅覚が衰えた老猫の食欲を刺激できます。
温めすぎると火傷の原因になるため、与える前には必ず指で温度を確認してください。
ドライフードの場合も、ぬるま湯でふやかすことで同様の効果が期待できます。
このひと手間を加えるだけで、食事への関心を示してくれる可能性があります。
3. いつものご飯に鰹節やペーストを少量トッピングする
いつものご飯に飽きてしまった様子のネコちゃんには、好きなものの香りを加えて嗜好性を高める工夫が有効です。
例えば、鰹節や猫用のささみのふりかけを少量振りかけたり、ペースト状のおやつを少しだけ混ぜ込んだりすると、その香りに誘われてご飯を食べてくれることがあります。
ただし、トッピングに慣れすぎるとそれがないと食べなくなったり、栄養バランスが偏ったりする原因にもなりかねません。
あくまで食欲を刺激するためのきっかけとして、ごく少量に留め、おやつしか食べないという状況を助長しないよう注意が必要です。
4. フードをお湯や猫用ミルクでふやかして柔らかくする
ドライフードを主食にしている場合、お湯や猫用のミルクでふやかして与えるのも良い方法です。
ふやかすことでフードが柔らかくなり、噛む力が弱くなった老猫でも食べやすくなります。
また、水分で温められることで香りが立ち、食欲増進の効果も期待できます。
消化器官への負担も軽くなるため、胃腸の機能が衰えがちなシニア期には適した与え方です。
ただし、ふやかしたフードは傷みやすいため、長時間放置せず、食べ残しはすぐに片付けるようにしてください。
ご飯を食べない愛猫の状態に合わせて水分量を調整しましょう。
5. 食べやすいように食器の高さや置き場所を調整する
食事環境を見直すことも老猫の食欲改善につながる場合があります。
加齢により関節炎などを患っている猫は低い位置にある食器で食べるために前かがみの姿勢になるのが辛いことがあります。
台の上に食器を置くなどして高さを出してあげると楽な姿勢で食事ができるようになります。
またネコちゃんは本来静かで落ち着ける場所で食事をすることを好みます。
騒がしい場所や人の出入りが激しい場所に食器を置いている場合は静かで安心できる場所に移動させてあげましょう。
食事に集中できる環境を整えることが大切です。
6. 一度に食べる量を減らして食事の回数を増やす
消化機能が低下している老猫は、一度にたくさんの量を食べることができない場合があります。
胃腸への負担を軽減するために、1日の給与量は変えずに、食事の回数を増やして1回あたりの量を減らす「少量多回数」の方法を試してみましょう。
例えば、これまで1日2回だった食事を3〜4回に分けて与えることで、無理なく食べられるようになることがあります。
空腹の時間が短くなることで、胃酸過多による吐き気を防ぐ効果も期待できます。
ネコちゃんの生活リズムに合わせて、食事のスケジュールを調整してみてください。
おやつを与える際に飼い主が注意すべき2つのポイント
愛猫とのコミュニケーションや食欲を刺激するきっかけとして、おやつは有効なツールです。
しかし、与え方を間違えると、おやつしか食べないといった偏食を助長したり、健康を損ねたりする原因にもなりかねません。
特に食が細くなりがちな老猫の場合は、主食である総合栄養食の妨げにならないよう、量や種類に配慮することが重要です。

1. 1日の総摂取カロリーの1割程度に抑える
おやつの与えすぎは、肥満や栄養バランスの偏りを招く最大の原因です。
おやつしか食べない状況を避けるためにも、おやつで摂取するカロリーは、1日に必要な総摂取カロリーの10%程度に留めるのが理想的です。
多くても20%を超えないように管理しましょう。
主食である総合栄養食のパッケージには、ネコちゃんの体重ごとのおおよその給与量とカロリーが記載されています。
その数値を参考に、与えるおやつのカロリーを計算し、その分、主食の量を少し減らすなどの調整が必要です。
健康維持の基本は、あくまで栄養バランスの取れた主食であることを忘れないでください。
2. 栄養バランスを補える総合栄養食のおやつを選ぶ
ネコちゃん用のおやつには、嗜好品として与える「一般食(間食)」と、それだけで必要な栄養素が摂取できる「総合栄養食」の2種類があります。
もし食が細く、主食をあまり食べてくれない老猫におやつを与えるのであれば、「総合栄養食」と表示されたウェットフードやペースト状のおやつを選ぶのがおすすめです。
これらをおやつとして与えることで、嗜好性を満たしつつ、不足しがちな栄養を補うことができます。
おやつしか食べない場合でも、栄養の偏りを最小限に抑えられます。
パッケージの表示を確認し、目的に合ったおやつを選びましょう。
こんな症状は病院へ|獣医師に相談すべきタイミングの目安
老猫がご飯を食べない時、単なる食の好みやわがままと片付けてしまうのは危険です。
食欲不振は、様々な病気が原因で起こる体からの重要なサインかもしれません。
特に、食欲以外の面でも普段と違う様子が見られる場合は、注意が必要です。
ここでは、様子見をせずに、すぐに動物病院を受診すべき症状やタイミングの目安について具体的に解説します。

1. 24時間以上まったく食事を口にしない
ネコちゃんは絶食に弱い動物であり、24時間以上何も食べない状態が続くと、「肝リピドーシス(脂肪肝)」という命に関わる重篤な肝臓の病気を発症する危険性があります。
特に、もともと肥満気味のネコちゃんはリスクが高いため注意が必要です。
おやつも含めて、水分以外のものを全く口にしようとしない状態が丸一日続いた場合は、単なるわがままとは考えにくいため、すぐに動物病院を受診してください。
ご飯を食べない原因を特定し、適切な治療を開始することが重要です。
2. 嘔吐や下痢など食欲不振以外の症状がある
食欲不振に加えて、嘔吐や下痢、便秘、水を大量に飲む、おしっこの回数が増えるといった他の症状が見られる場合は、病気のサインである可能性が非常に高いです。
また、元気がない、ぐったりしている、隠れて出てこない、呼吸が速いなど、行動面の変化も重要な判断材料となります。
これらの症状は、慢性腎臓病、消化器系の疾患、甲状腺機能亢進症など、様々な病気で共通して見られるものです。
複数の症状が同時に現れている場合は、自己判断せず、速やかに獣医師の診察を受けましょう。
3. 明らかに体重が減ってきている
ご飯を食べない日が続き、明らかに体重が減少している場合も注意が必要です。
体重減少は、食事から十分なカロリーを摂取できていないことの直接的な証拠であり、体のどこかに異常があるサインです。
特に老猫の場合、がんや糖尿病、腎臓病といった消耗性の疾患によって体重が減ることも少なくありません。
日頃から定期的にネコちゃんの体重を測定し、記録しておく習慣をつけておくと、変化に気づきやすくなります。
食欲が落ち、それに伴って体重も減り続けているなら、動物病院で詳しい検査を受けることを推奨します。
4. 口を気にしたり、よだれが増えたりしている
食事の際に口を痛そうにする、前足で口のあたりを頻繁にこする、よだれの量が増える、口臭が強くなるなどの症状は、口内トラブルのサインです。
口内炎や歯周病、歯のぐらつきなど、口の中に痛みや違和感があると、食べたくても食べられない状態になります。
また、食べ物を口に入れてもポロポロとこぼしてしまう場合も、口内の問題が疑われます。
このような症状が見られたら、無理に食事をさせず、動物病院で口の中を詳しく診てもらい、痛みの原因を取り除いてあげることが先決です。
老猫の食事に関するよくある質問
愛猫がシニア期に入ると、子猫や成猫の頃とは違った食事の悩みが出てくるものです。
特に食が細くなる老猫のケアについては、多くの飼い主が疑問や不安を抱えています。
ここでは、老猫の食事に関して特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。
日々のケアの参考にしてください。

Q. ご飯を食べない場合、無理やり与えても良いですか?
シリンジなどを使って無理やり与えるのは避けるべきです。
食べ物を誤って気管に入れてしまう「誤嚥」を引き起こし、肺炎につながる危険があります。
また、ネコちゃんにとって食事が苦痛な時間となり、さらに食欲不振を悪化させる可能性も考えられます。
ご飯を食べない場合は、まず動物病院で原因を調べてもらうことが最優先です。
Q. 食が細くなった老猫にはどんなフードがおすすめですか?
少量でも効率的に栄養が摂れる、高カロリーで消化の良いシニア猫用の総合栄養食がおすすめです。
ウェットフードは香りも強く、水分補給もできるため食欲が落ちた猫に適しています。
腎臓病など特定の疾患がある場合は、その病気に対応した療法食が必要になるため、必ず獣医師に相談して愛猫に合ったフードを選んでください。
Q. ご飯だけでなく水も飲まないのですが、どうしたら良いですか?
ご飯を食べないことに加え、水も飲まない状態は脱水症状を引き起こすため非常に危険です。
特に老猫は脱水が進みやすいため、半日以上水を飲んでいない場合は、すぐに動物病院を受診してください。
ウェットフードに切り替えたり、飲み水に少し風味をつけたりする工夫もありますが、まずは獣医師による診察と適切な処置が不可欠です。
まとめ
まとめ
老猫がご飯を食べないがおやつは食べる場合、その原因は加齢による身体機能の低下、病気、あるいは単なるわがままなど多岐にわたります。
飼い主は、おやつを食べるからと安心せず、愛猫の様子を注意深く観察することが重要です。
食事の形態を変えたり、温めたりといった工夫で食欲が戻ることもありますが、24時間以上の絶食、体重減少、嘔吐や下痢といった他の症状が見られる場合は、速やかに動物病院を受診する必要があります。
日頃から愛猫の健康状態を把握し、変化に気づいたら早めに対処することが、健やかなシニアライフにつながります。